アート: 2008年5月アーカイブ

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東京都現代美術館:MOT [屋上庭園]

『庭』をテーマにして、さまざまな作品を取り上げた展示。

『庭』と言っても、植物があって、川が流れていて…といったものではなく、この展示での『庭』は芸術家個人の記憶を再現するための概念的なもの。

個人の記憶を覗くような『庭』が10のセクションで展開。絵画や版画、映像、空間などさまざまな作品を観ることができました。

中でも「天空にひろがる庭」というセクションでの「三千世界」(フライヤーにも使われている作品)などは大胆な空間の使い方でとても印象的でした。

全体的には、普段あまり観ることがない版画なども見られて面白かったのですが、いまいち取り扱うジャンルが幅広すぎて、いまいちまとまりがない印象を受けたのもまた事実。

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ふと思い立って東京都現代美術館で開催中の『オスカール大岩展 夢見る世界』に行ってきました。

東京都現代美術館:MOT

オスカール大岩展 夢見る世界 ー MOT 東京都現代美術館

入ったところに展示されていた作品を見た時は、「色彩豊かだけど、なんか普通だな…」なんて思っていたのですが、進んでいくと次から次へと出てくる巨大な絵やオブジェの数々。

前半では1990年代の作品をメインに展示。ほとんどが現代社会を風刺したもので、自然界にあるものを人工物で置き換えてみたり、都市生活におけるひずみを有機物的な視点で捉えていたりといった作品が並んでいます。全体的に暗めの印象ですが、『ハチ公のレントゲン』や『シャドウキャットとラビットの出会い』『カエル』『モンキー』などちょっとしたユーモアを携えた視点が面白かったです。

都市化や温暖化など環境破壊をモチーフにした作品を見ていくと突如現れる緑や黄色、オレンジが一面に広がった色鮮やかな『カメレオン』が登場。これ以降は2000年代の作品が続きます(個人的に絵としては、この『カメレオン』が一番印象に残った作品でした)。

後半の展示では、それまでの社会への批判を伴ったわかりやすい作品から、さまざまな色を用いたある種『夢のような』世界を描いています。大きなキャンバスに描かれた作品たちは、パッと見た感じでは幻想的な美しい絵に見えますが、よく見るとどこか寂しげな、現代社会の持つ闇を暗喩しているような印象を受けました。サンパウロ、東京、そしてニューヨークと移り歩いてきた人だからこそ、グローバルな視点での嘆きや希望などを作品に込めようとしていたのかなあ、と。

また、絵画群の最後に登場する『神曲』や『ファイヤーショップ』『総理大臣の悪夢』といった一連の作品は、混迷を続ける現在の世界を力強く描いています。その他にも作品制作の過程である写真や下絵類なども展示されており、気がつけば僕もすっかり夢みる世界の住人となっていました。

尚、最後にオスカール大岩へのインタビューなどを含めた映像が上映されており、そこで公共の場での大岩オスカールの作品などを見ることができました。インタビューでは、ビジネスを絡めた上でのアートの扱いについて言及しており、『アートを受け入れる土壌』『大きな絵を描くことや絵画への向き合い方』など、現代美術で食べていくことへの考え方に触れられたのも、面白かったです。

ちなみに建築を学んできたからか、展示されている作品群にはまったくと言っていいほど人が出てきません。人がいたらそれはそれで面白い絵になったのかもしれませんが、まったく排除してしまうことで、そこに描かれている物全てが人間の生み出したものなんだという強烈なメッセージを感じました。

今後、どのような作品を描いていくのか、楽しみなアーティストです。良い展示会に出会えてとても嬉しく思いました。

東京都現代美術館:MOT

オスカール大岩展 夢見る世界 ー MOT 東京都現代美術館

大岩オスカール:夢みる世界(ブログ)

あーこの現実的なのに夢の中にいるような感覚、ちょっと映画のパプリカの雰囲気に似てるなあ。そういえば、以前に東京都現代美術館の現代美術を扱った展示ですでにこの人の作品に出会っていたことを今更ながらに気がつきました。

Art & ist―大岩オスカール幸男特集

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