アートの最近のブログ記事
『庭』をテーマにして、さまざまな作品を取り上げた展示。
『庭』と言っても、植物があって、川が流れていて…といったものではなく、この展示での『庭』は芸術家個人の記憶を再現するための概念的なもの。
個人の記憶を覗くような『庭』が10のセクションで展開。絵画や版画、映像、空間などさまざまな作品を観ることができました。
中でも「天空にひろがる庭」というセクションでの「三千世界」(フライヤーにも使われている作品)などは大胆な空間の使い方でとても印象的でした。
全体的には、普段あまり観ることがない版画なども見られて面白かったのですが、いまいち取り扱うジャンルが幅広すぎて、いまいちまとまりがない印象を受けたのもまた事実。
ふと思い立って東京都現代美術館で開催中の『オスカール大岩展 夢見る世界』に行ってきました。
入ったところに展示されていた作品を見た時は、「色彩豊かだけど、なんか普通だな…」なんて思っていたのですが、進んでいくと次から次へと出てくる巨大な絵やオブジェの数々。
前半では1990年代の作品をメインに展示。ほとんどが現代社会を風刺したもので、自然界にあるものを人工物で置き換えてみたり、都市生活におけるひずみを有機物的な視点で捉えていたりといった作品が並んでいます。全体的に暗めの印象ですが、『ハチ公のレントゲン』や『シャドウキャットとラビットの出会い』『カエル』『モンキー』などちょっとしたユーモアを携えた視点が面白かったです。
都市化や温暖化など環境破壊をモチーフにした作品を見ていくと突如現れる緑や黄色、オレンジが一面に広がった色鮮やかな『カメレオン』が登場。これ以降は2000年代の作品が続きます(個人的に絵としては、この『カメレオン』が一番印象に残った作品でした)。
後半の展示では、それまでの社会への批判を伴ったわかりやすい作品から、さまざまな色を用いたある種『夢のような』世界を描いています。大きなキャンバスに描かれた作品たちは、パッと見た感じでは幻想的な美しい絵に見えますが、よく見るとどこか寂しげな、現代社会の持つ闇を暗喩しているような印象を受けました。サンパウロ、東京、そしてニューヨークと移り歩いてきた人だからこそ、グローバルな視点での嘆きや希望などを作品に込めようとしていたのかなあ、と。
また、絵画群の最後に登場する『神曲』や『ファイヤーショップ』『総理大臣の悪夢』といった一連の作品は、混迷を続ける現在の世界を力強く描いています。その他にも作品制作の過程である写真や下絵類なども展示されており、気がつけば僕もすっかり夢みる世界の住人となっていました。
尚、最後にオスカール大岩へのインタビューなどを含めた映像が上映されており、そこで公共の場での大岩オスカールの作品などを見ることができました。インタビューでは、ビジネスを絡めた上でのアートの扱いについて言及しており、『アートを受け入れる土壌』『大きな絵を描くことや絵画への向き合い方』など、現代美術で食べていくことへの考え方に触れられたのも、面白かったです。
ちなみに建築を学んできたからか、展示されている作品群にはまったくと言っていいほど人が出てきません。人がいたらそれはそれで面白い絵になったのかもしれませんが、まったく排除してしまうことで、そこに描かれている物全てが人間の生み出したものなんだという強烈なメッセージを感じました。
今後、どのような作品を描いていくのか、楽しみなアーティストです。良い展示会に出会えてとても嬉しく思いました。
あーこの現実的なのに夢の中にいるような感覚、ちょっと映画のパプリカの雰囲気に似てるなあ。そういえば、以前に東京都現代美術館の現代美術を扱った展示ですでにこの人の作品に出会っていたことを今更ながらに気がつきました。
江戸東京博物館:特別展|北斎-ヨーロッパを魅了した江戸の絵師-
特別、北斎に興味があるわけでもなく、詳しいわけでもない僕ですが、観てきましたよ!
葛飾北斎と言えば冨嶽三十六景。中でもの富士山をバックにしたダイナミックな波が素晴らしい『神奈川沖浪裏』などがあります。というか僕はこれと妖怪絵ぐらいしか知らなかったんですけど。
今回の展示ではオランダ国立民族学博物館とフランス国立図書館に展示されていた肉筆風俗画40点や冨嶽三十六景などの版画や屏風などさまざまな作品が公開されています。
中でも前半で展示されている当時の生活風景を納めた浮世絵は、精密さと色彩の鮮やかさに驚き。遠景視点のものばかり描いているイメージがあったんですが、これらは当時の生活が生き生きと伝わってきて北斎に対しての印象を改めました。
個人的には、後半に展示されている団扇のために描かれた鷹がお気に入り。北斎の描く動物はどこか愛嬌があるというか優しい感じがしました。
また、展示の最後となる『絵手本』は北斎のデッサン力の高さを伝えています。踊りの振り付けを丁寧に解説した作品などもあったりして、このエリアだけでもかなり楽しめました。
さまざまな技法に挑戦し、精力的に作品を描き続けた北斎。風景画や人物、本の挿絵などありとあらゆる類の絵を描いていたんですね。予想以上に面白い展示で満足満足。
先日、弟君と銀座を回ったあとに向かったのが浅草。『ギャラリー・エフ』という所で開催されているジョエル・ビトンという方の映像インスタレーション展『ABSTRACT』を観に行くのが目的。
<イベント情報>
TAB イベント - ジョエル・ビトン 「ABSTRACT」
ギャラリー・エフ自体は浅草駅からすぐの場所にあったんですが、かなり小さいお店でなかなか見つけられず。店内に入ると何人かのお客さんがお茶していて展示はどこに?とキョロキョロしているとスタッフの方が奥へと案内してくれました。
小さな入り口をくぐって中に入ると、そこは薄暗い蔵の中。室内には静かに音楽が流れ、中央にカーペットが敷かれています。スタッフの方曰く、靴を脱いでカーペットの中央に進んでみてください、と。
どれどれと早速カーペットに上がってみると、突然、足下に映し出される色彩豊かな自分の影。
「おおおおおー。」
思わず声を上げる僕と弟君。
リアルタイムに対象物を捉えて、それを光の影として投射しているんですかね。自分の影の中だけに映される日本庭園の緑豊かな映像に感動。最初こそ、はしゃいでしまい色々動き回ったりもしましたが、時間が経つに連れて静けさ漂う空間を落ち着いて楽しむことができました。
どうやってトレースしているんでしょうかね。光を当てて反射してくる部分だけを読み取ってるのかな?
気がつくと変わっている風景。途中、映像の中に人が出てきたりもしました。
こういった体験型の展示ってなかなかないので、結構長居してしまいました。
展示はこの作品1点のみだったのですが、もうこれだけで十分満足。日本が紡いできた歴史や価値観みたいなものを、こんな風に表現するというのは普段から日
本に慣れ親しんでいる自分たちにはなかなか発想できないなあ、と感心してしまいました。あと、見るだけじゃないこういう五感を使った展示ってやっぱり面白
いなあ、と。
ちなみに『ABSTRACT』とは、『抽象的な』とか『観念的な』『ぼんやりした』という意味。